091323 ランダム
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Getting Better

Getting Better

夜は短し歩けよ乙女

町田康の夫婦茶碗を読んで以来の衝撃です。

もともと、日本文学的ファンタジーが大好きな私ですが、

京都を舞台に繰り広げられる、ロマンチック・エンジン全開な恋に奥手男と 絶対的天然少女、黒髪の乙女のラブ・ファンタスティックストーリーなのですが、私的にも幻想的なイメージで思い入れの深い、先斗町・木屋町から物語がスタートするあたり引き込まれないはずもなく。

そのうえ、黒髪の乙女の魅力的なキャラクターは、とても微笑ましく、こんな子が現実に私の目の前に現れたのなら、きっと、とてもいいお友達になれるだろうに・・・と思いつつ、彼女と一緒に京都中を探索した気分なのです。

この物語のもっとも山場と思われる学園祭の一節でも、
彼女の言うとおり、オモチロイことが数々おこり、私も巨大な緋鯉のぬいぐるみを紐で背負い、右手にお汁粉、(時にクレープや林檎)左手に達磨、首に達磨の首飾りの格好で学内を夢中で闊歩することを想像するとテンションもあがり、あげくの果てには、偏屈王というゲリラ舞台の主演女優、プリンセス・ダルマ役を完璧に演じる彼女の才覚にすっかり惚れ込むのであります。

その傍らで、なんとか偏屈王の役を射止めようと、命賭け悪戦苦闘する恋に奥手男に同情の念を抱かれる読者も多いと思われますが、彼が悪戦苦闘すればするほど、この物語は面白くなるのです。
私にとっては、彼の努力など彼女の魅力を引き立てる飾りにすぎず、物語が終盤になればなるほど、もっと彼女の動向を、もっと彼女の言葉を、と欲するようになるのです。

しかし彼の不要な大迂回は続き、彼女の言動に事あるごとに割り込み、私を小さく苛立たせるのです。やがて彼女の登場は私のオアシスとなり、小さな苛立ちを癒す場となるのです。

お二人が同じ想いで喫茶店に向かう最終章を読み終えると、何故かとてもすがすがしい気分でした。私はお二人の奮闘を春夏秋冬を通して拝見しました。 今、お二人がそれぞれに知りたいことを私は知っているのです。 お二人の喫茶店での語り合いが、さぞかし楽しくなるであろうことも私にはわかるのであります。

今となっては、私の小さな苛立ちは、私の人間性の小ささを露呈したに過ぎず、彼がいたからこそ、彼女はあそこまで輝きを放ったのだと確信しております。

こうして出逢ったのも、何かの御縁
運命の御都合主義によって、また再びお逢い出来きますように。なむなむ!


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